#GRAVITY百物語#怖い話「インターホン」①私が院内保育所で働いていた時のお話。院内保育所とは、主に病院スタッフのお子さまを預かる小規模な保育園です。夜勤をする看護スタッフのために、私も夜勤をしていました。夜勤は、大体私と園長の2人で数人のお子さまを預かるという体制でした。例え預かるお子さまが1人であったとしても、開園するには必ず2人の職員がいなければなりません。迎え盆の、8月13日のことでした。珍しくお盆に夜勤が入りました。保育をするお子さまは1人。あいちゃんという、2歳の女の子です。園長は事務室で事務仕事をしていたので、私はお子さまにお夕飯を食べさせ、お風呂に入れ、寝かしつけをして…いつも通り夜が更けていきました。(お盆は、空気がざわざわするな……。)学生の時、お盆は苦手でした。お盆に飲食店のアルバイトに入ると、頻繁に人数を間違えてしまうのです。どんなに気をつけても、何故か人数以上に水を置いてしまうミスをしてしまいます。指摘されてお客様を見ると、確かに水が多い…高級レストランでの給仕でしたので、このようなミスはとんでもないことでした。それ以来、お盆は実家に帰るふりをして、別のアルバイトを入れました。ただでさえ相貌失認症である私には、対人関係のミスが、酷くおそろしいものに感じたのです。あいちゃんの深い寝息を確認し、時計を見ると21時をさしていました。ブレスチェックをしながら制作活動の材料を揃えたり、壁面を作ったり、書類を作成したりしていると、あっという間に時間は過ぎていきます。気付くと日付けも変わりそうです。夜勤では、交代で仮眠の時間を取ります。その日、24時から2時までは、園長が仮眠を取るはずでした。「ごめん!どうしても家に行かなきゃならなくて…2時には必ず戻るから、それまでお願い。あいちゃんが起きると悪いから、インターホンは鳴らさずにラインするね。私が戻ったら玄関の鍵開けてくれる?」突然、そう言って、園長が慌てて去っていってしまいました。#私の実話シリーズ#本当にあった怖い話#残り94話