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「悪趣味」②

Yさんは「よく気づいたね。」と、軽くTシャツを撫で、「これは僕のデザインなんだ。Tシャツプリントを安くしてくれるところがあってね、まあ、趣味なんだよね。」と、微笑みます。
「オリジナルなんですね!」驚いて、改めて今日のYさんのTシャツに目を落としました。若い女性が、静かに微笑んでいます。

(あれ、私…この女性、見たことある、気がする……。)なんとなく、嫌な感じがしました。
(誰だっけ、最近見たような気がする……。)思い出してはいけないような、そんな気がしました。でも、目が離せません。

「これ、誰か、わかる?」Yさんが近寄り、真顔で私の顔を覗き込みます。正確には、口元は笑っていますが、目が全く笑っていません。冷たく、射るような目。一気に鳥肌が立ちました。

「あ……わかりません。」なんとか声を絞り出し、その場を離れた私には、もう、わかっていました。
(なんで……なんのために?)混乱する私の耳には、蝉の鳴き声。
(まさか、今までのやつ、全部?)
そう、そのTシャツで微笑んでいたのは、ここ連日テレビで目にしていた、殺人事件の被害者でした。

他の部員は、気付いていたのでしょうか。
その日以来、私はYさんを見ないようにして過ごし、1度も話すことはありませんでした。もちろんYさんのことを他の部員と話すこともありません。心底気味が悪かったのです。
ただ、素晴らしいティンパニの音色と、あの夏の日の事が、忘れられずにいます。

これは私の実話です。

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「カチカチ」①

これは私が大学生の時のお話です。
広大な敷地を持つ大学には、森がありました。
今思うと農学部もありましたので、あの森も、何かの研究用だったのかもしれません。
森自体にはなんの思い入れもありませんでしたが、問題は森に集まるカラスです。
大量のカラスが森に巣食い、大学の内外問わず荒すようになり、大量の糞が落ちました。
落ちてきた糞で汚れることも多々あり、学生の間では「カラステロ」と呼ばれ、恐れられていました。

ある日、私はサークル棟へ向かう坂道を下り、オーケストラ部の練習場へと歩いていました。
活動する場所として割り振られたその場所は、森の脇に建てられたプレハブで、夏は暑く冬は寒いと悪評高い部室でした。
あの日は残暑が残るものの、秋風の吹く過ごしやすい日だったと思います。
森の横の坂道ということで、どこを見ても視界にはカラスが入りました。

(またカラスが増えてる……そろそろ大学も対策すべきじゃないかな、食料にして売り出すとか。)

と、我ながら無茶なことを考えながら部室に着きました。

個人練習を終えて部室を出ると、だいぶ日が陰り、カラスの鳴き声があちこちから聞こえます。茜色に染まる、夕暮れでした。
これからアルバイトに向かう足取りは重く、更に上り坂でしたので、ゆっくりと歩みを進めます。そのうち、妙な音が聞こえてきました。


カチカチ

なんだか聞き覚えのあるような音です。

(なんの音だろう。)

②に続く

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「悪趣味」①

私が大学生の時のお話です。
オーケストラ部に所属していた私は、ティンパニ担当のYさんの音が大好きでした。今までに聴いたティンパニの中で、1番良い音がしていたと、今振り返ってみても思います。特に剣の舞や、ベルリオーズの幻想交響曲での、ティンパニの深く素晴らしい音色は忘れられません。

そんなYさんですが、見るたびに柄の異なるTシャツを着ていました。Yさんは身長が高く、Tシャツの柄が、ちょうど私の目の高さにくるのです。毎日、被ることが1度も無かったので、「衣装持ちだな…。」と、日々感心して見ていました。

いつも異なる柄の、〈誰か〉の顔をベースにデザインされた、Tシャツ。その〈誰か〉は、子どもだったり、老婆だったりと年齢層も幅広く、おそらくは1度も同じ顔が無かったように思います。
私は相貌失認症ですので、もちろん顔そのものはわかりません。ですが、だからこそ細かいパーツはよく見てしまいます。
目は見過ぎると相手に不快感を与えてしまうので、なんとなく口元を見て相手の感情を読む癖が当時ありました。
特に静止している写真の口元は、印象に残ります。YさんのTシャツにいる〈誰か〉は、いつも笑っていました。

「YさんのTシャツ、毎日柄が違って面白いですよね。」
ある時ついに、私はYさんに話しかけました。
7月のとても暑い日、バイト帰りに個人練習をしようと立ち寄った部室には、たまたま私と、Yさんだけがいました。

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アキオくんから聞いた話。

アキオくんと私は、大学で知り合いました。
田舎者と思われるのが嫌で、大学デビューを果たしたアキオくんは、とにかくチャラくて声が大きくて馴れ馴れしくて……私とは縁のないタイプの男性だと思っていました。
ところが、不思議なことに、このアキオくんは大人になった今も交流があります。

そんなアキオくんが、この間会ったときに「悪いけどマスク外してくれない?俺さ〜、マスクをしている女性、今めちゃくちゃ怖いんだよね。」と、言い出しました。
詳しく話を聞くと、彼は昔と変わらぬ大きな声で話し出します。

新型コロナウイルスも5類になり、段々職場でもマスクを外す人が多くなる中で、頑なにマスクを外さない女性がいたそうです。
名前はハルナさん。
大人っぽい雰囲気で、きっとマスクを外したらめちゃくちゃ可愛いんだろうなぁと、アキオくんは密かに狙っていたのだそうでした。
ちなみにアキオくんは、大学時代から女性関係が派手で、得意の話術を駆使して様々な女の子をナンパしていました。大人になってもそれは変わらなかったようです。
ハルナさんはおっとりしながらも、仕事はテキパキこなすキャリアウーマンで、隙がなさそうに見えましたが、ある日会社の飲み会で口説き落としが成功してLINEをやり取りする仲になりました。
「こうなればもう、こっちのものっていうか……まあ、最終的に、そんな流れになってさぁ。」
そんな流れ、というのはまあ、つまり男女の仲ってことなんですけど。
「実は、デート中も飲食しないし、マスクを一切外してくれなくて。それであの日、初めてみたんだよね、俺。ハルナさんのマスクの下。」
アキオくんが、ハルナさんのマスクを外すとそのマスクの下の顔には。


◯す◯す◯す◯す◯す◯す◯す◯す◯す◯す


✕ね✕ね✕ね✕ね✕ね✕ね✕ね✕ね✕ね✕ね


びっしり、赤いペンで隙間のないくらいに、書いてあったんだって。
絶句するアキオくんに、ハルナさんはにっこりして。
「これ、書いといたら、大嫌いな上司の前でもニコニコしていられるよ?オススメ。」って、言ったんだそう。
それ以来アキオくんは、女性のマスク姿を見ると、あの文字が浮かんじゃって、もう、怖くて仕方ないんですって。

これは、アキオくんの実話です

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「裏ページ」①

私が中学2年生の時のお話です。

当時はまだ、パソコンが一般家庭にやっと普及したばかりで、インターネットも電話回線で繋ぐダイヤルアップ接続でした。

お若い方は、イメージが湧きにくいお話かもしれませんが……できるだけ詳しく書いていきたいと思います。

中学2年生の私は、いわゆる厨二病にかかっていました。インターネットにどっぷりとハマり、色んな情報を仕入れては悦に入っていたものです。

パソコンができる自分に酔いしれて、無駄にチャットをしたり、お絵かき掲示板(しぃお絵かき掲示板わかる人いるかなぁ。)で絵を描いたり。
タイピングの技術はその頃に磨かれて、今では周りから喋るより早いと驚かれるほどです。

そして、当時は個人ホームページが流行した時分でした。
流行に乗ってホームページを作る同級生に憧れ、自分でも今で言うブログ的なものを作ったりしていました。

あの時代のホームページは、今までに訪れた人の人数がカウントされるアクセスカウンターがあって、このページに訪れた〇〇人目ですっていうのがわかったんですよね。延べ人数ですけれど。

〇〇人目が、100とか1000とかキリの良い人数だと〈キリ番〉と言って、踏んだ人はサイト管理人に掲示板(BBS)で報告するのが暗黙の了解でした。
〈キリ番踏み逃げ禁止!〉の意味がわかる方は同世代かもしれません。
〈キリ番〉を掲示板に報告すると、サイト管理人から自作のイラストや小説をもらえたりして、嬉しかったなぁ……懐かしいです。

さて、本題に入ります。

当時私には、お気に入りのホームページがいくつかありました。その中の一つに、読んだ本の感想文と共にグロいイラストを載せているものがあり、私はそのホームページの更新をとても楽しみにしていました。

なにぶん絶賛厨二病だったもので、ダークなイメージに惹かれる傾向がありました。本の感想文に添えられる禍々しいグロイラストが大好きだったのです。

釘があたまに刺さった男の子のイラストや、血まみれで俯く女の子のイラスト……1番覚えているのは、自分の生首を大事そうに抱えて佇む首なしの男の子です。

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「ヤクザの引っ越し」②

現場に着くと、そこは普通のマンションで、いかにもヤクザな風貌の依頼人が出てきました。どうやら愛人さんは不在のようです。こちらのスタッフは、確か4人だったと記憶しています。私以外、全て男性でした。

挨拶を済ませ、さっそく作業に入ろうとすると、依頼人がリビングの奥にある部屋を指差し、「あそこは女だけで作業してくれ。男はリビングから先には入らないでくれ。」と言いました。必然的に私が一人でその部屋に行くことになります。

部屋を開けると、(うわ……これを一人で?)と、途方に暮れました。おそらくは愛人さんの寝室なのでしょう。ベッドの周りには細々とした小物が置かれ、収納の中にもなにやら物が沢山入っています。高そうなお洋服も山のようにありました。

梱包に必要な資材を取りに戻ると、上司が「どんな感じ?時間かかりそう?」と聞くので、思った以上に荷物が多く、おそらく3時間以上はかかると答え、すぐに作業に取り掛かりました。

「言い忘れてた。」と、急に依頼人が現れ「そこの棚は俺が持っていくからよ、絶対に触らないでくれ。」と、収納スペースにある小さな棚を指差します。
「承知しました。」と答えると、ニコッと微笑み「いや〜、助かる。俺、これから猫ちゃん見てくるからよ、あとは頼んだわ。」そう言って、去っていきました。
本来ならば、トラブル防止のために、引っ越し作業中は依頼人に家の中に居ていただかなくてはいけなかったのですが、まあ、特別だったのでしょう。作業が終わるまで依頼人は戻りませんでした。
私はというと、時間と戦いながら作業を進めます。

(せめてもう一人スタッフがいればなぁ。)と、ボヤきながら手を動かし、ベッド周りは箱詰め終了。収納スペースに移りました。

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