『陪審員2番』★★★★★★★クリント・イーストウッド監督、恐らくは最後の作品、そして集大成。この作品、本国アメリカでもたった35館という小規模公開に留まり、日本では劇場公開せず。U-NEXT独占配信となった。観終わったあととなると、この判断が本当に理解不能となるほどに、良作だった。クリント・イーストウッドは、やはり天才である。ジョージア州でタウン誌のライターを勤める主人公、ジャスティン・ケンプ(ニコラス・ホルト)。ある日ケンプは、とある殺人事件の陪審員に選ばれる。事件は、酔っ払った男女が口論の末、男が女を殺害したという内容。被告の素行の悪い前歴や目撃者もいる簡単な事件と見られ、評決は時間の問題と見られていた。しかしケンプは気付く。被告であるサイスと被害者のカーター。自分はこの2人の口論を見ている。そして同じ日同じバーにいた記憶もよみがえり、さらにはその帰宅時、ケンプは豪雨の中、『何か』を車ではねていた。車を降りて確認したが何も発見出来ず、恐らくは鹿と接触でもしたのだろうと解釈し、そのまま帰宅していた。この事件、真犯人は自分かも知れない。物語は、裁判と陪審員室、ケンプの1年前の回想が交互に展開する。目の前の被告サイスは悪人だが、この件に限っては無罪。ケンプは善良な市民だが、この件の真犯人かも知れない。簡単に終わるはずだった評決は、ケンプ自身の凄まじい葛藤と共に混迷する。この物語の醍醐味は、明らかに被告が無罪であることを知るのが主人公のケンプだけである事と、疑惑はあれど、ケンプが真犯人かどうかは分からないという事、その2つの要素を内包しながら展開していく部分にある。これは、『真実』を評決する『陪審員制度』自体の脆弱性をも問いつつ。『真実』が『正義』とも限らないという現実も我々に問いかけてくる。全編を通して、主人公ケンプの葛藤と動揺が観るものに伝播し、とにかくドキドキが止まらない。クリント・イーストウッド、彼の集大成にして最後の傑作が、ここに誕生した。……『正義』、とは?オンリーU-NEXTにて。#映画 #小さな幸せ #クリント・イーストウッド #ニコラス・ホルト