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鳥頭寿三郎
うむ、のたまっておいてなんだが羽毛の如き軽さのことばだ。
しかし、私にも在るにはあるのだ。
そんな時、いつも試すことがある。
私は深く暗い川底の、流れを外れた横穴にひそみ住むなまずであると妄想する。
私の躯を収めるこの横穴の壁は滑らかで絹のようだ。
ここはぬるい水も流れ込まず、水温も安定しており居心地がよい。
私はその横穴の框(かまち)、入口に頭を近づけ外の流れに目をやる。
世界は美しい群青で、時折細かな石英の欠片や、流れに身を任せる鮠の子どもが流れてきたりする。
在るのは美しいものだけであり、私に害をなすものは一切ない。
横穴はこの川でいちばん安全であり、何者も寄せつけない強固さと隠匿の性質で塗り固められている。
眠れぬ夜の布団の中で強く想像して試してみてほしい。
寝室が暑ければ、空調でもって、多少肌寒さを感じるくらいの室温に調整し、すっぽりと体を夜具にもぐりこませ、布団のヘリをほんの少しだけ開ける。
新鮮な空気を取り入れるための、その穴があなたにとっての、横穴と群青色の暗く美しい川底をつなぐ入口である。
布団は安楽で、なんの懸念も煩いもない絶対的な世界である。
少しだけあけたら隙間からは新鮮で冷たい夜気が入ってくるが、それはあなたを眠りにいざなう物質をはらんだ夜のフォトンだ。
まなこからも、鼻腔からも、それらは優しく浸潤しながら染み込んでゆく。
浸潤してゆく。
浸潤してゆく。
浸潤してゆく。
このまじないを、
すべての眠れぬ夜の迷い子たちへ、捧ぐ。
#再掲
#のようなもの

Ether tune
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美しく静かで平和な気持ちになるこの記事がとても好きです。 眠れない時って不快なことばかりに敏感になりますます眠れなくなる。 そんな時にはまたこの記事を読んで群青の世界の中でゆっくりと夜のフォトンに身体が満たされてゆくのを想像しよう。
MUTA🦍
ありがとう、 こちら不眠症の山椒魚 浸潤、浸潤、浸潤…唱えます