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イグアナ
友が東京ドイツ村で世界最古の修道院ビールを買ってきたとのことで、イグアナ家では3週末にわたりドイツフェスが開催されている。
作ったことのない料理を作りたいとの友の要望で、今回イグアナは味見係。プレッツェルしか買っていない。リビングで待っている間いろんな匂いがして先行きを密かに危ぶんでいたが、食べた瞬間、ここの豆スープがあなどれないんだよ、とにこにこするパパと向かい合わせで食事をしたホームセンターのフードコートの光景が、まるで昨日のことのように蘇った。
あの時食べたのは緑色のえんどう豆のスープで、ソーセージも切らずにまるごとどろっとしたスープに浮かんでいて、そぼくな丸パンが添えてあった。500円もしなかったと思う。お父さんにとっては軽食だったんだろうけど、イグアナはお腹いっぱいになった。
今回食べたのはレンズ豆のスープだし、ぷりぷりのシャウエッセンがたっぷり入っているし、ブーケガルニで洗練された味わいにもなっている。
別物といえば別物だ。だけど、ホームセンターのざわつき、子供のように楽しそうにしているパパ、フードコートから漂う食堂の匂い、一瞬で子供の頃に引き戻される。
私が死んだら、マイマイちゃん🐌(イグアナの愛称)は何が欲しい?
いつかママに聞かれたことがある。
タイプライター!とその時は答えた。戸惑いは心の奥に押し込めながら。
わかったわ、とママは地下室にある、イグアナにあげるもの、スペースにタイプライターを置いた。本当は、ママのレシピ集、といいたかったのを、言い出せなかった。ママの料理はどれも素晴らしく、レシピはちいさい几帳面な字でブロックノートに記入されてファイリングされ、キッチンの奥の本棚に大切に保管されていた。
ドイツ料理の本を何冊も持っているけれど、ママの料理を再現することはできない。いろんな秘密や、試行錯誤が書かれている、あのノートが無ければ。けれどお兄ちゃんにもお姉ちゃんにも相談せず、それが欲しいというのは図々しい気がして、気が引けてしまった。
ビール美味しいね!味が深い、と友が言った。
このスープ、すごく、すごくおいしいよとイグアナは答えた。ドイツのと全くおんなじ、と。
本当!?と友は嬉しそうに笑った。食べたことないから不安だったと。うん、おんなじだった、沢山の思い出が溢れそうになるくらい。



愛をこめて花束を - Orchestra Ver.
コメント
関連検索ワード
橙
きょうも読みいってしまった フォトエッセイを出せばいいのに 僕が読者1号ね(一号がいっぱいいそう🤭)
ヒサ
レシピ集・タイプライター……。ドイツでの優しい思い出がイグアナさんからの素敵な文章から凝縮されてますね。
あんるとい
ドイツ、ビールとくるとミーハーな私はオクトーバーフェストを連想してしまいました[ほっとする]
なな
写真は美味しそうだし、文章でも美味しそうだし…素敵♥
し〜ぷ☆*。
友が作る美味しい料理で懐かしい ドイツのパパとママとの記憶が 鮮やかに蘇るのってなんだかほっこり 幸せな気持ちになるね・:*:・(*´艸`*)・:* お料理どれも美味しそう😋