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イグアナ
珍しく野外ライブもなく、夜の下北沢は比較的静かであった。小田急線が遅れていると友から連絡があり、早めに着いていたイグアナは雑貨屋でフライパンを物色していた。目星だけつけて店を後にし、甘党の友を連れて行ける、なるたけ夜遅くまで空いているカフェを探した。これも目星をつけて脳内マップをアップデートしていると(下北沢はお店の入れ替わりが激しい)、電話が鳴った。合流してカレー屋に向かう。
豆のカレーを注文してお手洗いにたって戻ってくると、友はまだ券売機の前で迷っている。最後に一番辛いカレーとご飯大盛りの2枚の券をカウンターにだした。
スゴクカライ、と言う店員さんに、頑張ります!と元気に答える友。イグアナのおすすめは、2番目に辛いウルルカレー(キーマ)だが、なかなか来ることもないからどうせなら、とのことらしい。わからないでもないが、カレーにはデスバレーとおどろおどろしい名前がついている。出てくると、真っ赤な油が浮かんでいた。美味しい美味しいと、食べているので一口もらうと、確かに美味しい。ここのカレーは辛いだけじゃないよな、と感心していると、喉の奥がかっと熱くなる。辛いと認識する前に、汗と涙が噴き出した。
悲しくもないのに後から後から涙がでるのはおかしなものだと自分の豆カレーにもどる。喉の熱は食道をゆっくり降りてゆき、どうやら胃に到達したらしい。気持ちよく頭がすっきりしている。友といえば半分ほど食べた頃より笑顔が消え、リラックスした店内の様子とは裏腹に、汗みずくで皿とにらめっこをしている。ものすごくゆっくり食べているなとみていると、なかなか次の一口に踏み出せないのだ、リアクション芸人のすごさがわかると、わかるようなわからないような事を言って、最後の一口を飲み込んだ。
ほら、次のお客さん待ってるから、移動するよと急かすと、友は冷たいチャイを一気に飲み干して、のろのろと扉に向かった。食事前の元気が嘘のようだ。
気の毒になって先ほど目星をつけておいたカフェ、ご馳走するよ、甘いもの食べようと提案したけれど、固形物はもう入らない、という。急がなくていいよ、とりあえず入ろうとイグアナはカプチーノを頼んだ。てきぱきと働くホールスタッフ、テラス席で一人新聞を読む異国の男性。隣の女の子たちは、皆各々スマホを触りながら思い出したようにストローを吸っていた。


何の時間
コメント
関連検索ワード
ヒサ
「スゴクカライ」と仰った店員さんに「頑張ります!」と返したお友達のやり取りに笑みがこぼれました。高校時代からの親友は、甘党でチャイが好きです。
ゆに
やはり、イグアナさんの文章は素敵
スティカ🍭
かき氷の流れ星からやってきました! すごく読みがいがあって、素敵でした!よければフォローさせてください!
ᴋᴏɴᴊᴜ
カレーもカプチーノも美味しそう~[ほっとする] スパイスの効いたカレー食べたい🍛
そら⭐︎
イグアナさん!こんばんは♪ カレー美味しそうですねー😋 (私は甘口が好きです笑)