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大福
古代から、プーリア州のイトリア渓谷周辺では石灰岩台地を利用した家造りが行われてきた。まず、大地から四角い石灰岩ブロックが切り出され、円や長方形に並べて二重の壁を築き、壁から円錐形や半球形・ピラミッド形の二重の屋根が架けられた。二重の壁の間にはレンガが挟み込まれており、ブロック製の暖炉やオーブンなども設置された。屋根の石材は薄く、これを何層にもわたって少しずつ内側に張り出させて円錐形に仕上げている。いわゆるコーベル・ドーム(コーベル・アーチ=持送りアーチを回転させたドーム)だ。
壁は漆喰で白く塗られる一方、屋根はそのままで、日が経つにつれて屋根にはコケや地衣類が生え、紫外線の影響を受けて灰色に黒ずんでいく。中には屋根に白く宗教的なシンボルを描いたり、頂点に特徴的なピナクル(ゴシック様式の小尖塔)を備えた家もある。地下の穴は貯水槽として利用され、水は屋根に設けられた水路を通して地下に送られる。
最大の特徴は、ひとつの屋根に対してひとつの部屋しかない点で、内部はカーテンなどで仕切られた。また、セメント(石灰石や軽石・ 粘土などを粉状に砕いたもの)やモルタル(セメントに水と砂を加えて練り混ぜたもの)といった接合剤を使用しない乾式工法である点も独特だ。
こうしたトゥルッロはイトリア渓谷に広く見られるが、アルベロベッロのモンティ地区に1,030戸、アイア・ピッコロ地区に590戸とそのほとんどが集中している。これは14世紀半ば、十字軍での活躍を認められたコンヴェルサーノ伯がターラント公からこの土地を封ぜられてからのことで、農民を呼び寄せてこれらの地区にトゥルッロを築かせ、荘園として整備した。特に17世紀前半、ジャン・ジローラモ・ギュルツィオの時代に町は大きく発展し。18世紀後半には人口3,500人を超えた。
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大福
このような円錐形・ピラミッド形・ドーム形の乾式工法による石造建築は数千年前から地中海各地で見られるが、現存しているものはほとんどない。アルベロベッロにおいてもトゥルッロの建設は1797年に封建制が終了して急速に衰退するが、いまなお人々はトゥルッロに住んでおり、その伝統を伝えている。

アメジスト
読書しました。
土と生命の46億年史
土と進化の謎に迫る
藤井一至 著
講談社ブルーバックス
まず、本書冒頭で、土とはなにかについて定義されています。
土とは岩石が崩壊して生成した砂や粘土と生物遺体に由来する腐植の混合物である。
この土をつくることがいかに難しいかということを250ページかけて語るのが本書のテーマとなっています。
第一線の研究者による著作だけあって、新しい知見がいろいろ述べられており、勉強になります。
第3章では、奄美大島において、ストッキングに詰めて森林の中に埋められた岩石粉末や火山灰が、40年の時を経て掘り出され、腐植によって「土のようなもの」に姿を変えていたという感動のエピソードが載っています。
腐植とは実は枯葉の残骸程度のものではなく、半分は死菌体由来の物質であり、非常に多数の微生物によって分解されたものである、団粒構造になっているのは、ミミズが食べてフンをすることで出来上がったものであるそうです。
第5章においては、フルーツの争奪戦に負けて、西アフリカの熱帯雨林から東アフリカの草原へと生活の場を変えたサルが人類の祖先であるという興味深い説が述べられています。
幸運なことに新天地の東アフリカの草原地帯は肥沃な土地で、直立二足歩行で両手の自由を得た人類の祖先は、ユリ根を食べるようになり、どこでも生きられるように雑食性に進化したそうです。
第7章においては、人工土壌を開発する可能性の展望を述べる一方で、都市部で問題となっている食品ロスによる食品廃棄物を発酵して生成されるメタンガスを火力発電に用い、できた堆肥を農業に利用するという循環型社会の可能性について述べられています。
現代の人口爆発や、ニューヨークや東京といったコンクリートジャングルという名の廃墟の拡大は、人類滅亡への序曲であるという時代にあって、土と共に生きる生物としての原点を問うというのは人類の未来を問うことであるように思います。
#読書
#読書感想文
#土
#人類
#人新世


りぴー
空想旅行vol6【ヴェルム=ガロア王国】
深淵と空の狭間に輝く謎の王国、ヴェルム=ガロア王国
群青と漆黒が織りなす不思議な都市景観が広がるヴェルム=ガロア王国。金色の波模様の上に逆さまの双頭黒竜を描いた国旗が、海と空の狭間で悠然と翻る姿は壮観だ。約760万の人口を抱えるこの王国では、人間と三つの特異な種族が共存している。
深海に適応した「深淵の民」は、鰓と特殊な視覚器官を持ち、水中都市の管理を担っている。体を自在に液状化できる「霧の民」は、建築や芸術において独自の技術を発展させてきた。そして成長とともに皮膚が徐々に金属化する「鋼の蛹」は、王国の重要な資源供給者として敬われている。
名産品の「竜涎真珠」は、深淵の民だけが育てられる特殊な貝から産出される黒真珠で、内部に青白い光を宿している。儀式用の装飾品として珍重されるだけでなく、神秘的な力の源として魔術研究にも用いられる。「無窮の酒」は注ぐと杯から霧が立ち昇り、口に含むと無限に広がる海の深さを感じさせる味わいがある。「鋼糸の織物」は鋼鉄の耐久性を持ちながら水鳥の羽のように軽く、王国の高級防具や礼服に使用されている。
王国を取り巻く自然環境も神秘に満ちている。「無限渦海」は常に逆流する海流が生み出す巨大渦で、古代の技術が眠るとされる遺跡が中心部にあるという。探検家たちの間では「渦の向こうに別世界への入口がある」という伝説も信じられている。また「天鏡の湖」は夜になると湖面が完璧に星空を映し出し、まるで空と地上の境界が消えたかのような幻想的な光景を創り出す。
しかし、この美しき王国にも悩みは尽きない。無限渦海の影響で海底都市は定期的に沈降し、建築の継続的な修復が必要とされている。技術の結晶である都市を守るため、建築家や技師たちは日々新たな対策を模索している。さらに近年、鋼の蛹の成長率低下が深刻化し、重要な金属資源の供給不足に直面している。加えて、天鏡の湖に映る星空に「存在しない星座」が増え始め、それを目撃した者が次々と行方不明になるという怪異も発生している。この謎を解明すべく、王立天文学者たちが日夜観測を続けている。
四種族の知恵と技術が交わるこの王国は、困難に直面しながらも、深海と星空の間に独自の文明を築き続けている。

アメジスト
読書記録です。
近代ヨーロッパの覇権
福井憲彦 著
講談社学術文庫
印象が一番残ったのはp288~291の19世紀におけるナショナリズムと排外主義ですね。
昨今のヨーロッパにおける極右の台頭について関連することですが、ナショナリズムの二面性、自民族の特徴や固有性を強調すること、外部に明確な敵性国家ないし敵国民を設定することはコインの裏表、表裏一体なのだと思います。
それはナショナリズムが内外の境界を明確に引くことにおいて成り立つものだからです。
歴史的な脈絡では19世紀の末になると、工業化が進行するなかで多極化しつつあった経済覇権をめぐる抗争、激化した植民地獲得競走や勢力圏争い、こうした状況において、国家の威信とか権威といった観点が重みを増してきました。
特に1880年代から90年代というのは世界の景況が芳しくない時期にあたり、国民国家における異分子、外国からの出稼ぎ労働者や移民、ユダヤ人などがスケープゴートにされました。
ネイションとして内部をまとめるためには、外部に敵を設定することが好都合だからです。
昨今の極右の台頭も19世紀的な国民国家体制に依然として固執していることを示しています。
地球規模の課題に対して、一国主義的な国益優先思考を打破できるかどうかが、希望ある未来へ進める分岐点となるのかもしれません。
#読書
#読書感想文
#ヨーロッパ
#歴史
#社会問題


モンちゃん
⭕️ 日刊新聞創刊の日
明治5年(1872年)に東京で初めての日刊新聞「東京日日新聞」(現在の「毎日新聞」)が創刊された
創刊者は戯作者・条野採菊、浮世絵師・落合芳幾らで、政治家・江藤新平らが後援した
⭕️ 食糧管理法公布記念日
昭和17年(1942年)に国民の食糧の確保と国民経済の安定を図るために「食糧管理法」(食管法)が公布された。施行は同年7月1日。
⭕️ 漱石の日
明治44年(1911年)に文部省が作家・夏目漱石に文学博士の称号を贈ると伝えたのに対し、漱石は「自分には肩書きは必要ない」として辞退する旨を書いた手紙を文部省専門学務局長の福原鐐二郎に送った
⭕️ マリルージュの日
夏木マリさんとパーカッショニストで音楽プロデューサーの斉藤ノヴ氏が代表をつとめる「One of Loveプロジェクト」が制定、日本記念日協会により認定登録された
同プロジェクトでは音楽とバラで途上国のこどもたちの教育環境の整備と、その母親たちの雇用を支援する活動を行っている。
(地球) 国際母語デー
教育・科学・文化の発展と推進を目的とした専門機関である国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が平成11年(1999)11月に制定
言語と文化の多様性、多言語の使用、母語の尊重を推進することが目的

アメジスト
読書しました。
[新版]幻想の中世
ゴシック趣味における古代と異国趣味
J.バルトルシャイティス 著
西野嘉章 訳
幻想に溢れていた中世ヨーロッパ。
なかでも本書では、12~15世紀のゴシックと呼ばれる時代に焦点をあてています。
中世ヨーロッパのグリロスあるいは合成獣が好きな方には特にオススメの内容となっています。
180点の図版が載っており、図鑑のような面白さがあります。
古代ギリシャ・ローマの玉石彫刻だけではなく、中東の伝承・図像に由来する動物を実らせる植物などオリエントの伝承も中世ヨーロッパに異形モチーフをもたらしました。
特に中世末期に活躍したグリロスの画家ヒエロニムス・ボスの図版が多数掲載されており、必見です。
モンゴルがユーラシア大陸一帯を征服した13世紀には、東アジアの絵画と地獄についての伝承がヨーロッパに伝わり、ゴシック美術においてドラゴンがコウモリの翼を持つようになったことについての関連性が指摘されています。
また、東アジアの千手観音のモチーフが西洋に伝わり、ジャン無畏公の写本にある十二本の腕を持つ運命の寓意像との関連性が指摘されています。
古代ギリシャ・ローマだけではなく、サラセン帝国やモンゴル帝国などとの人的・文化的交流もゴシックの幻想のモチーフを形づくることにおいて大きな役割を果たしたことがわかる一冊となっています。
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#幻想
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