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原田美穂子

原田美穂子

あの時。冬を越えだんだんと暖かくなり、一息のつく季節。私は春休みで祖父と一緒に居間で過ごしていた。黒い食卓テーブルに肘を付いて、床に座り、テレビを見ていたのだ。
それは突然だった。臀の下から突き上げる力を感じた。まるで容赦のない力だ。普段の揺れと違うと分かる。だがいつもと同じく気づかないふりをする。この揺れに名前を付けたら現実になってしまうから。トラックか何かが通っただけだ。そんなふうに、気付かないふりをする。だが、考えがおよぶまで揺れは待ってはくれなかった。急いで立ち上がり玄関まで走る。扉を開けて出入口が塞がれないようにしながら、祖父を呼びに戻る。「早く!外に出ないと。」祖父も慌てて着いてくる。私の取り乱し様に、落ち着けと繰り返しながら外に出た。電線が揺れていた。アスファルトの道路が見た事のない形で波を打っている。横に揺れているのか。これは地震だ。

牡丹雪の季節
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